今月の注目会社は株式会社イコーズです。2000年に設立した同社は、旧態依然とした内航海運業界の現状と将来に危機感を持ったオーナー5名が集まり、業界近代化へ向けた新しい試みとしてスタートさせたのがイコーズです。今回は6月に4代目の社長に就任された畝河内社長と人財開発室で新卒採用の担当をされている白石さんにインタビューを行いました。

株式会社イコーズ 畝河内代表取締役社長
ブリッジ:まずは、畝河内社長!4代目社長就任おめでとうございます。御社は設立以来、内航業界の常識を疑い続け、業界のGame Changerとして革新的な取組みをされていますが、社長就任の抱負をお聞かせ頂けますか?
畝河内:メンバーでは最年少(末っ子)で4代目のバトンを受けました。これまでの内航海運の課題解決の為に、半歩先を踏み出すという、イコーズ文化をしっかり踏襲していくつもりです。
環境はまさに激動の時代で、外部的にはカーボンニュートラル、自動化(DX)の推進、内部的には働き方改革、生産性の向上等課題が山積です。
しかし、このような時こそ、これらの裏に業界が変わるような、大きなチャンスも隠れていると確信しています。今後一層、周囲の方々とより広い連携をとりつつ、さらにいろいろな事に挑戦するつもりです。また、イコーズがやったねと言われるように。ご期待下さい。
ブリッジ:御社の業務形態はオペレータと船主の間に立ち「船員管理」、「船舶保守・管理」、「運航管理」を行なっていますが、それぞれの業務内容をお聞かせください。
畝河内:当社ではケミカル船2隻、LAG船1隻、貨物船7隻、コンテナ船8隻の合計18隻の船舶をお預かりし「船員管理」、「船舶保守・管理」、「運航管理」業務を行なっています。
先ずは「船員管理」ですが、採用した人材が責任を持って仕事にあたれるように、資格管理から能力管理まで、それぞれのキャリアアップを支援しています。
また、弊社では配乗船種により、45日乗船と70日乗船の2つの乗船期間があり、何よりも楽しみな休暇をしっかりとれるように管理しています。
次に「船舶保守・管理」ですが、オーナー様からお預かりした船舶を安全・確実に運航するために、ドック計画、監督から日常の機関設備の保守・管理まで、計画的に最善の状態を維持します。
海上経験や新造・修繕ドック経験のある豊富な工務スタッフが、安全とコストパフォーマンスを常に追求し顧客のニーズに対応しています。
最後に「運航管理」ですが、安全かつ効率的な船舶の運航管理を次世代に繋げる為に、船陸間通信(DX)を活用した船陸が一体となった新しい船舶管理に取り組んでいます。
ISMシステムを中心とした体系つけられた組織管理と陸上遠隔監視及び支援を組み合わせることで、船上の労務軽減(働き方改革)及び更なる安全性(生産性)の向上を追求しています。

コンテナ船「すざく」
ブリッジ:業界をびっくりさせるような革新的な取組みを多く行う御社ですが、最近の関心ごとと言えば自動運航船「すざく」の実証実験ではないでしょうか。機密事項も多いと思いますが、差し支えのない範囲でお話し頂けますか?
畝河内:もともとは、日本郵船さんの技術コンサルタント部門であるMTIさんとの出会いがきっかけでした。彼らの陸上からの遠隔支援技術とわれわれの内航船に自動化を導入したいという思いが一致したところからプロジェクトは始まりました。実証実験の航路は、東京湾から津松坂港で船舶が多く輻輳する海域を完全自動で運航することは世界初の試みとなりました。この実証実験で避航距離の精度を上げていく等の技術的な問題点もありましたが、世界に日本の技術力を証明する目的は果たせました。今後は、日本財団さん支援のMEGURI2040(2040には日本の内航海運の40%を自動化することを目標)プロジェクトにおいて、この技術がもっと普及していく事を目的とした取り組みが行われていく事になります。
すざく(749GT)の要目についてはHPに紹介動画付きでアップされていますのでご覧ください。
http://www.ikous.co.jp/suzaku/index.html
ブリッジ:御社では革新的な取組にどうしても目が行きがちですが、安全活動にも地道な努力を注がれていると聞きます。御社ならではの取組みをお聞かせください。
畝河内:主な活動は安全品質管理部が統括し、安全年度目標のテーマ設定と進捗確認を行っています。
また、自社、他社でのトラブル、対策のデータ蓄積、他船への横断展開等、やはり訪船やドック安全会議、また必要に応じて役員訪船を通じてなど、現場とのコミュニケーションを大切にした安全活動が中心です。年度末には独自の年間安全表彰制度も有り、5年継続度に副賞のグレードも上がります。
ブリッジ:ケミカル船、LAG船、貨物船、コンテナ船と4種類の船種を揃ええる御社ですが、甲板部員、機関部員として乗船した場合、どのような仕事の内容になりますか?
白石:最初は免状の有無関係なく、定員+1名で船に乗っていただきます。船内教育担当者を選任しておりますので基本的にはその担当者と新人の二人一組で動いていただきます。イコーズの管理船は甲板3名、機関2名の船が主力となっているので甲板、機関ともに出入港、荷役監視、当直、整備作業を覚えていただきます。
ブリッジ:入社して研修や見習い期間はありますか
白石:乗船前に陸上で2~3日間研修を行います。会社説明会では話せなかった船員(船)や各部署(陸上)の役目、安全教育などを行います。乗船後は個人のスキルアップの為に外部研修に参加していただくこともあります。
また、カデットという育成期間というのを設けています。育成期間中は半年に1度、仕事の習熟状況や勤務状況を評価しています。習熟のスピードや勤務状況は人それぞれ違うのでカデットを卒業されるタイミングは様々です。卒業後は、その方が執れる職務に就いていただきます。
ブリッジ:新入社員に必要なスキル、資格はなんですか
白石:海技資格がなくともキャリアアップの中で取得できるところが弊社の強みです。入社後には、先ずは海技士資格(6級)、甲板部であれば海上無線、タンカーで職員を目指せば、甲種危険物取扱をそれぞれの状況に合わせて取得していきます
ブリッジ:航海士、機関士への昇格のタイミングはいつ頃になりますか
白石:カデット制度でも触れましたが、カデット卒業のタイミングは各自様々です。卒業後はその方が執れる職務(三航士以上、二機士以上)に就いていただきます。
ブリッジ:最後にズバリ!御社が求める人材は
畝河内:清く 楽しく 面白く を実践できる人です
清く : 仕事に素直で実直に向き合える
楽しく: 人の悪口を言わない、出来ないことを人のせいにしない 途中であきらめない
面白く: 今日は今日 明日はもっと良くする 切り替えと向上心
船員不足、船舶の老朽化、カーボンニュートラル、働き方改革などなど、内航海運を取り巻く環境は厳しい状況が続くばかりです。畝河内社長はご謙遜され内航海運の課題解決の為に半歩先を踏み出すと仰いましたが、同社は他社に類のみない一つ飛び抜けた斬新なアイディアでこの苦境を乗り切ろうとしています。自動運航船「すざく」をはじめ、年間安全表彰制度にカデットと呼ばれる育成システムなどユニークで独創的な制度がたくさんあります。インタビュー記事を読み、その「イコーズSpirit」に共感した方も多いはずです。ケミカル船、LAG船、貨物船、コンテナ船と4種類の船種を揃えるイコーズで、その精神を引き継いでみませんか。